diagnosis(評価と診断)は、VBTを「測るだけ」で終わらせず、原因を特定して次の一手に変えるための考え方です。
結論:評価は①当日の状態(コンディション)と②出力の質(速度)と③疲労の溜まり方(Velocity Loss)の3点で回すと、現場で迷いません。
VBTにおける「評価と診断」とは?
VBTのデータは、ただの記録ではありません。
速度(MPVなど)と速度低下(Velocity Loss)を使うと、次の問いに答えられるようになります。
- 今日は出力が出ているか?(=コンディションの評価)
- 狙った刺激になっているか?(=ゾーンの適合)
- 疲労がどれだけ溜まっているか?(=止めどき)
“診断”とは、データを見て「何を変えるか」まで決めることです。
速度が遅い → 重量を下げる/セット数を減らす/フォームを修正する、まで落とし込みます。
診断の軸①:今日のコンディション(出力の有無)
まず見るべきはウォームアップ速度です。
いつもより同じ重量が遅いなら、疲労・睡眠不足・練習負荷などで出力が落ちている可能性があります。
チェック方法(簡易)
- いつも使うウォームアップ重量(例:スクワット60kg)でMPVを見る
- 「普段の速度」と比べる(チームなら基準表を作る)
- 明確に遅いなら、その日の負荷・量を調整する
判定の考え方(現場向け)
- いつも通り:予定通り実施
- やや遅い:重量を微調整(−2.5kg等)またはセット数を1つ減らす
- かなり遅い:メインを軽くして速度ゾーンを守る/技術練習優先に切り替え
診断の軸②:速度ゾーン(狙い通りに当たっているか)
次に、メインセットの速度が狙った速度帯(速度ゾーン)に入っているかを確認します。
ここが外れると、同じメニューでも「別のトレーニング」になります。
| 狙い | 現象 | 診断 | 修正 |
|---|---|---|---|
| パワー狙い | 速度が遅い | 重すぎ or 疲労 | 重量を下げて速度帯へ戻す |
| 最大筋力狙い | 速度が速すぎる | 軽すぎ | 重量を上げて狙いに合わせる |
| スピード狙い | PVだけ跳ねる | 反動・癖で盛れている | MPV基準に戻し、フォーム統一 |
診断の軸③:Velocity Loss(疲労の溜まり方)
速度ゾーンで「狙い」を揃えても、セット終盤に速度が大きく落ちると、狙いが変質します。
ここで使うのがVelocity Loss(VL)です。VLは「疲労の深さ」を揃えるための指標になります。
VLの目安(代表)
- 10–15%:出力維持(質優先)
- 20–25%:筋肥大寄り(刺激と疲労のバランス)
- 30%以上:疲労蓄積大(追い込みは計画的に)
診断的に重要なのは「VLが高い=悪い」ではなく、狙いに合っているかです。
例えばパワー狙いなのにVLが30%を超えるなら、それは刺激がズレているサインです。
診断パターン集(現場で即使える)
パターンA:速度が最初から遅い(全体的に出ない)
- 診断:疲労・睡眠不足・前日の練習負荷・栄養不足の可能性
- 対策:重量を下げてゾーンを守る/セット数を減らす/技術練習優先
パターンB:最初は速いが、VLが急に上がる(ガクッと落ちる)
- 診断:局所疲労が早い/フォームが崩れてロスが増えている可能性
- 対策:VLカットオフを低めに設定/休憩を延ばす/フォームの共通化
パターンC:PVだけ高い(MPVは伸びない)
- 診断:反動・切り返しで「瞬間値」が跳ねているだけの可能性
- 対策:MPV中心に評価/反動禁止ルールで統一/可動域を揃える
パターンD:速度は出るが、狙いのゾーンから外れる
- 診断:重量設定が不適切(軽すぎ or 重すぎ)
- 対策:当日速度で微調整(±2.5kg)して“狙いの速度帯”に合わせる
診断を「次の一手」に変えるテンプレ(超実用)
データを見て終わりにしないために、次のテンプレで意思決定すると現場が回ります。
診断→処方テンプレ
- 状態:ウォームアップ速度は普段より(速い/同じ/遅い)
- 狙い:今日は(最大筋力/パワー/スピード)
- 調整:重量を(上げる/維持/下げる)
- 止めどき:VL(10–15%/20–25%/30%+)で終了
- 結果:次回に向けて(睡眠/栄養/練習量)を修正
まとめ:評価は「再現性」を作る技術
diagnosis(評価と診断)は、VBTのデータを使って再現性の高い強化を実現するための考え方です。
①当日の出力(速度)を見て、②狙いの速度ゾーンに合わせ、③VLで止めどきを揃える。
この3点セットが回り始めると、トレーニングは「根性」から「設計」に変わります。


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