1RM(最大挙上重量)とVBT(速度ベーストレーニング)は「どっちが正しいか」ではなく、得意分野が違う指標です。
結論:1RMは“地図”、VBTは“GPS”。地図(設計)を作り、GPS(当日の微調整)で迷わず進むのが最強です。
まず整理:1RMとVBTは何を見ている?
| 項目 | 1RM(最大挙上重量) | VBT(速度) |
|---|---|---|
| 見ているもの | 最大で何kg上げられるか | その瞬間の出力(速度)と疲労(速度低下) |
| 強い場面 | 期分け・長期設計(%1RMで処方しやすい) | 当日の調整・再現性(狙いを速度で揃える) |
| 弱い場面 | 日々の変動(疲労・睡眠・ストレス)を反映しにくい | 測定・運用の統一がないと数値が崩れる |
1RMのメリット:設計が作りやすい(ただし“静止画”)
1RMは「いまの最大筋力」を示す代表値です。
これがあると、%1RMで負荷設計ができるため、トレーニング計画(期分け)が作りやすいのが強みです。
1RMが強いポイント
- 誰が見ても分かりやすい(数字が明確)
- %で処方できるので、プログラム設計に落とし込みやすい
- 「最大筋力そのもの」を伸ばしたい時に評価指標として使える
1RMの弱点(現場で起きがち)
- 測った日が過去:1RMは日々変動するのに、基準が更新されない
- 同じ%でも出力が揃わない:疲労が強い日は速度が出ず、狙いが変質する
- 測定コスト:頻繁な1RM測定は時間もリスクも大きい
例:80%1RMの日なのに、今日は疲れて速度が出ない。
結果として「筋力の日」ではなく「ただキツい日」になり、翌日の練習にも影響する…これは現場あるあるです。
VBTのメリット:当日の“出力”と“疲労”を見える化(=動画)
VBTは挙上速度(主にMPV)を使って、いまこの瞬間の出力を数値で捉えます。
さらにVelocity Loss(速度低下率)で、セット内の疲労も管理できます。
つまりVBTは、1RMのような“静止画”ではなく、現場の状態をリアルタイムに映す“動画”です。
VBTが強いポイント
- 当日の調子を反映:睡眠・疲労・ストレスの影響が速度に出る
- 目的を固定できる:速度ゾーンで「最大筋力/パワー/スピード」を揃えられる
- 止めどきを揃えられる:Velocity Lossで“追い込み過ぎ”を防げる
Velocity Lossの目安(代表)
- 10–15%:出力維持(質優先)
- 20–25%:筋肥大寄り(刺激と疲労のバランス)
- 30%以上:疲労蓄積大(追い込みは計画的に)
VBTの弱点(対策すれば潰せる)
- 測定条件が重要:可動域・反動・テンポがブレると比較できない
- 指標が多くて混乱:導入期はMPV+VLだけで十分
- 数値に引っ張られる:フォーム(動作品質)を最優先にする
現場の結論:1RMは捨てない。VBTで“当日補正”する
一番うまくいくのは、1RMで設計し、VBTで当日補正する運用です。
1RM(地図)で大枠を決め、VBT(GPS)でその日の最適ルートに微調整します。
おすすめ運用パターン(超実践)
- 大枠は%1RMでメニュー化(例:今日は80%で3×3)
- ウォームアップで速度チェック(いつもの重量が遅い=疲労)
- 狙いの速度帯に合わせて重量を微調整(+2.5kg/−2.5kgなど)
- Velocity Lossでセット終了(10–15%など)
これをやると、「同じメニューなのに人によって潰れ方が違う」問題が減り、
チームでも“狙いの刺激”が揃いやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 1RM測定はもう不要?
不要ではありません。設計(%1RM)に使えるし、最大筋力の評価にもなります。
ただし、頻繁にガチ測定する必要はなく、VBTで日々の変動を見ながら更新していくのが現実的です。
Q. VBTがあれば、重量は気にしなくていい?
重量は重要です。VBTは重量を否定するのではなく、重量の意味を“速度で確かめる”ための仕組みです。
Q. 導入初期は何から見ればいい?
まずはMPV(平均推進速度)とVelocity LossだけでOKです。
指標を増やすのは、運用が回ってからで十分です。
まとめ
1RMは設計の基準(地図)。VBTは当日の状態を反映する調整装置(GPS)。
どちらか一方ではなく、組み合わせることで「狙いの再現性」が一気に上がります。
まずは「%1RMメニュー+速度チェック+VLカットオフ」の3点セットから始めてみてください。


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