速度ゾーン(Velocity Zones)は、VBTを「使える武器」にする核心です。
結論:重量(%1RM)ではなく“速度”で狙いを揃えると、日々のコンディション差があっても
トレーニング目的(最大筋力/パワー/スピード)をブレさせにくくなります。
速度ゾーン(Velocity Zones)とは?
速度ゾーンとは、挙上速度(主にMPV:平均推進速度)を使って、
「いまのセットがどの能力を狙っているのか」を分類する考え方です。
たとえば同じスクワットでも、遅い速度で行えば最大筋力寄り、
速い速度で行えばパワーやスピード寄りの刺激になります。
なぜ“重量”ではなく“速度”なのか
- 同じ重量でも、疲労・睡眠・ストレスで速度(=出力)が変わる
- 狙いは「何kg」より「どの質で動けているか」の方が本質
- 速度で揃えると、チームでも刺激の再現性が上がる
速度ゾーンの代表例(目安)
速度ゾーンは流派や機器によって細分化されますが、現場導入ではまず「3〜5ゾーン」で十分回ります。
ここでは“迷わない”ための代表的な目安を提示します(主にMPV基準)。
| ゾーン | MPV目安(m/s) | 狙い | 現場のイメージ |
|---|---|---|---|
| 最大筋力 | 0.15–0.35 | 高強度で神経系・最大出力 | 重い、遅い、しかし崩さない |
| 筋肥大/ベース | 0.35–0.55 | ボリューム確保・土台 | “効く”が、追い込み過ぎない設計が重要 |
| パワー | 0.55–0.75 | 力×速さ(競技パフォーマンス寄り) | 速く動ける重量で“強く速い”を作る |
| スピード | 0.75–1.00+ | 速度・キレ・動作品質 | 軽いが雑にしない。狙いは“速さの質” |
注意:上の速度は種目や選手レベルで変わります。
大事なのは「チームで同じルール」「同じ機器」「同じ可動域」で、相対的にゾーンを揃えることです。
速度ゾーン運用の基本:狙いは“速度で固定”、重量は“後から合わせる”
よくある誤解は「今日は60%1RMだからパワーの日」という考え方です。
実際には、同じ60%でも疲労が強ければ速度が出ず、パワー刺激になっていない可能性があります。
速度ゾーン運用では逆です。
先に速度(狙い)を決める → その速度が出る重量に合わせる。
これにより、狙った能力への刺激がブレにくくなります。
セットが“別物”になる:Velocity Loss(速度低下率)とのセット運用
速度ゾーンを決めても、セット終盤に速度が大きく落ちると、
いつの間にか「パワーの日」が「追い込みの日」になります。
そこで役に立つのがVelocity Loss(VL)です。
ゾーン×VL(止めどき)おすすめ
- 最大筋力/パワー:VL 10–15%(質優先。崩れたら終了)
- 筋肥大/ベース:VL 20–25%(刺激と疲労のバランス)
- 追い込み目的:VL 30%+(頻度と回復をセットで設計)
現場で回る“最短テンプレ”
テンプレA:週2〜3回の基本(チーム導入向き)
- Day1:最大筋力ゾーン(0.15–0.35)+VL10–15%
- Day2:パワーゾーン(0.55–0.75)+VL10–15%
- Day3(余裕があれば):筋肥大/ベース(0.35–0.55)+VL20–25%
テンプレB:シーズン中(疲労を溜めない)
- 狙いは「維持」。最大筋力/パワー中心、VLは低め(10–15%)
- セット数を絞り、速度が落ちたら即終了(量より質)
テンプレC:オフ期(伸ばす)
- 筋肥大/ベース(0.35–0.55)を増やし、VL20–25%で刺激量を確保
- 最大筋力・パワーは“質枠”として残す(全部追い込まない)
よくあるミス(これを避けるだけで上手くいく)
- ゾーンが多すぎる:導入期は3〜4ゾーンで十分。増やすほど現場が止まる。
- 可動域がバラバラ:深さや反動が違うと速度比較が崩壊する。
- 速度を出そうとしてフォームが崩れる:速度は目的達成の指標。動作品質を最優先。
- VLを入れない:ゾーンを決めても、終盤の粘りで狙いが変質する。
まとめ:速度ゾーンは“目的の固定装置”
速度ゾーンは、トレーニングの目的を「重量」ではなく「動きの質(速度)」で固定する仕組みです。
そしてVelocity Loss(VL)をセットで使うことで、目的がブレる最大原因である「追い込み過ぎ」を防げます。
まずはMPVでゾーン運用+VLで止めどき統一。
これだけで、VBTは“理論”から“現場の武器”に変わります。


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