MPV(Mean Propulsive Velocity)とは?|VBTで最も“使える速度指標”を理解する

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MPV(Mean Propulsive Velocity)とは?|VBTで最も“使える速度指標”を理解する

MPV(Mean Propulsive Velocity:平均推進速度)は、VBT(Velocity Based Training)で頻繁に使われる速度指標のひとつです。
一言でいうと、「バー(または負荷)が“押して進んでいる区間”の平均速度」です。

VBTにはピーク速度(PV)や平均速度(MV)など複数の指標がありますが、MPVは「現場の意思決定に直結しやすい」ため、実務で採用されることが多い指標です。
このページでは、MPVの定義・意味・他指標との違い・運用のコツまで、指導現場で迷わないように整理します。


目次


MPVの定義:どの区間の平均なのか

MPVは、挙上動作の中でも「推進局面(propulsive phase)」と呼ばれる区間の平均速度です。
推進局面とは、簡単に言えば「自分が力を出して加速し、負荷を前(上)へ推し進めている区間」のこと。

例えばベンチプレスなら、胸から押し上げていく途中、スクワットなら立ち上がりで加速していく途中に当たります。
動作の終盤では、バーを止めるために減速が入りますが、MPVはその“減速でのブレ”をなるべく避けて、「押し切る区間の実力」を捉えようとする指標です。

ポイントはここです:

  • MPV=「全区間」ではない(推進局面に絞る)
  • 減速区間(止める局面)の影響を受けにくい
  • 結果として実力・疲労・負荷の変化を読み取りやすい

なぜMPVが使われるのか:現場でブレにくい

VBTは「速度で判断する」手法ですが、速度指標の選び方を間違えると、判断が不安定になります。
MPVが好まれる理由は、ざっくり言うと“現場でのブレが比較的小さい”からです。

MPVが現場向きな理由

  • ピーク(瞬間)に依存しない:一瞬の加速で数値が跳ねにくい
  • 減速局面の影響を受けにくい:止め方や癖で歪みにくい
  • 疲労の影響が見えやすい:レップを重ねると平均が落ちやすい

つまりMPVは、VBTの目的である「出力を見て意思決定する」に向いています。


MV / PV / Vmax との違い

VBT機器やアプリによって表記が少し違いますが、代表的な速度指標は次の通りです。

  • PV(Peak Velocity):最も速かった瞬間速度(ピーク)
  • MV(Mean Velocity):挙上の全区間の平均速度(減速も含むことが多い)
  • MPV(Mean Propulsive Velocity):推進局面だけの平均速度

超ざっくり言うと、こう捉えると迷いにくいです。

  • PV:爆発的な一瞬の出力を拾いやすい(その分ブレやすい)
  • MV:止め方・癖・可動域で影響を受けやすい
  • MPV:実力と疲労の変化を“平均”として捉えやすい

「どれが正解か」ではなく、何を判断したいかで指標を選びます。
ただ、日々の運用(負荷調整や速度低下の判断)ではMPVが扱いやすい、という立ち位置です。


MPVで何が決められる?:速度帯設計と負荷調整

MPVを使うと、次のような意思決定がやりやすくなります。

① その日の重量を微調整(オートレギュレーション)

「今日は同じ80%1RMでも遅い」「今日は軽く感じて速い」といった日内変動に対して、MPVを目安に重量を上げる/下げる判断が可能です。

  • 予定より速い → 重量を少し上げる
  • 予定より遅い → 重量を下げる/セット数を減らす

② 目的別の速度帯(筋力・パワー・スピード)を運用

VBTでは、狙いに応じて「このくらいの速度帯でやる」という設計をします。
MPVが安定して取れると、目的に対してブレない負荷管理がしやすくなります。

※速度帯の具体値は種目・機器・選手レベルで変わるため、ここでは概念として押さえましょう。
大事なのは、“目的 → 速度帯 → 重量決定”の順番で運用することです。


速度低下(Velocity Loss)とMPV

MPVは、速度低下(Velocity Loss)との相性が良いです。
Velocity Lossは簡単に言えば、「セット内で速度がどれだけ落ちたか」を見る考え方。

例えば、トップのMPVから一定割合落ちたらセットを止める、という運用ができます。

  • 落ち幅が小さい(速度を守る)→ 疲労を抑えやすい
  • 落ち幅が大きい(追い込む)→ 疲労は増えるが刺激は強くなる

ここで重要なのは「何%が正解か」よりも、目的に合わせて“落ち幅のルール”を決めることです。
MPVを基準にすると、ピークより安定して低下を捉えやすく、意思決定がブレにくくなります。


よくある落とし穴:MPVが当てにならないとき

MPVは便利ですが、条件が崩れると“数字の意味”が薄れます。よくある落とし穴を押さえておきましょう。

① 可動域が毎回違う

スクワットの深さ、ベンチの胸タッチ位置などが変わると、速度も変わります。
MPV以前に、フォームと可動域の合格基準を固定するのが先です。

② 反動や癖で加速の形が変わる

反動が強い/切り返しが雑だと、推進局面の形が変わり、MPVの比較が難しくなります。
「数値のための動作」になったら本末転倒です。

③ デバイスの装着・設定・種目がバラバラ

同じMPVでも、機器や取り付け位置、計測アルゴリズムで数値の出方が変わることがあります。
運用では、同じ環境での相対比較を基本にすると安定します。


現場テンプレ:MPV運用の最小ルール

最後に、MPVを「使える形」にするための最小ルールをテンプレ化します。
まずはこれだけでOKです。

MPV運用テンプレ(最小構成)

  • 目的:今日は筋力?パワー?スピード?
  • フォーム合格基準:可動域・反動・軌道・痛み(OK/NG)
  • 基準速度:その日の狙いのMPV目安(範囲で持つ)
  • 調整ルール:速い→上げる / 遅い→下げる
  • 停止ルール:速度低下(Velocity Loss)で打ち切る
  • 記録のゴール:次回の一手(増やす/据え置き/下げる)

MPVは“計測項目”ではなく、現場の判断を支える道具です。
「目的 → 合格フォーム → MPVで判断」という順番を守るだけで、VBTは一気に回り始めます。


まとめ

  • MPVは「推進局面(押し切る区間)」の平均速度
  • ピーク依存の指標より、現場運用でブレにくい
  • 負荷調整(オートレギュレーション)や速度低下(Velocity Loss)と相性が良い
  • ただし、可動域・フォーム・計測条件が揃わないと意味が薄れる

MPVを理解すると、VBTは「測る」から「意思決定する」へ進化します。
次は、MPVを使って速度帯設計Velocity Lossをどう運用するかを押さえると、さらに実戦的になります。

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